第2部:祈りの手紙朗読作品一覧

一般公募の手紙朗読

3.佐藤睦子(73歳・女・福島市)「愛犬チロへ」
 
 
“チロ”今までありがとうね。パパが亡くなってからは、いつも側にいてくれたね。6年前の3月11日、外出先で大きな揺れを感じ、とっさに近くのポールに掴まって体を支え、目の前の信号は止まりちぎれる程の電線の揺れを目のあたりにし、留守番をしているチロを案じ、ただ儘ならぬ状況の中に物の崩れる音の恐怖を感じつつ戻り、玄関の鍵穴に鍵の入らぬもどかしさが、ドアを開けた時の安堵、脅えているチロを抱き余震を恐れて外へ、あの時は冷たい風と雪がちらついていたね。でも抱いているチロの温もりと鼓動にひとりでないと感じさせてくれたね。しかし昨年の3月あの時と同じようにママの腕の中で静かに逝ってしまいましたね。でもいつも側にいるような気がしているよ。チロちゃんありがとうね。
独り暮らしのママを癒し支えてくれて本当にありがとう。大丈夫だから心配しないでね。
「チロが逝く 風やわらかき 春の日に」睦子